当院で銀歯を使わない理由(前編)では詰め物の素材について書きましたが

後編では詰め物を固定する材料について書いてみます。

ダイレクトボンディングと異なり、詰め物は歯科技工士さんに作っていただきます。その手順を最初に・・・・

 

歯型を取らせていただいて、1週間程お時間を頂くと、

詰め物ができあがってきます。

それを削った穴にはめ込みます。

時にはあまり精度の良くない詰め物を見かけます。

上にはめ込むだけでは、食事の時などすぐ外れていますので

多くの場合「セメント」という材料で

固定します。

 

 

ところがこの「セメント」いくつか弱点があります。

特に上の歯のように詰め物と歯の間に隙間が大きくあると

数年経つうちに段々、溶け流れてしまいます。

そうすると隙間が出来てしまうのです。

お風呂などで使われるタイルを想像してください。

タイルそのものは剥がれなくても、タイルとタイルの

間の”目地”の部分が劣化してぽろぽろと剥がれているのを

目にしたことは無いでしょうか?

 

当然そこは、細菌にとって居心地の良い”すみか”となります。

その結果、むし歯に再発します。

タイルの話で例えるとタイルが剥がれなくても

タイルの目地が取れるとタイルの裏にカビが生える状態を

イメージしてみてください。

そうしますと困ったことに、一度目のむし歯と違い、

中から更に進行するので

神経に近く、また詰め物がカタカタとしているだけでは取れない

限り、レントゲンでも肉眼でも見つかりにくいのが難点です。

当然、細菌だけでは無く水分や空気も入り込んでしまいます。

銀歯が腐食してしまうのは、このセメントも片棒を担いでいるのです。

 

 

そこで、実は『接着剤』を使うと良いのです。

「セメントで歯に付けたんじゃ無いの?」と思われるかもしれません。

『セメント』は無機質で劣化しやすく、接着しているのでは無く、

摩擦で人工の歯を固定しています。

それに対し、『接着剤」は歯や金属、セラミックに

文字通り化学的に接着して

歯を補強します。また耐久性も段違いです。

 

ではなぜセメントを使わないの?という話は

後ほどに・・・・

接着剤のメリットを絵にします。

 

皆さんも腕の良い技工士さんに作ってもらいたいと思いますが

実は詰め物をピッタリ作っていただくには、そもそも

上手に歯を削って、上手に歯型をとる。

つまり、歯科医師の仕事がきちんとなされていることが

前提です。

(この話はこれ一つで一つのテーマになりますので今日はここまでに)

 

このように精度の良い詰め物を接着剤で”接着”します。

(セメントで付けた場合は””合着””といい、歯科医は明確に区別します。)

それでも・・・・・

過酷なお口の中では、トラブルが起きます。

度々皆さんから「先生、この歯どのぐらい持ちますか?」という

質問を受けますが、治療を終えても天然の歯の部分が欠けるということは

多くあります。

でここで接着剤を使うメリットがあります。

 

従来、この様な時は一度詰め物を全て壊して、

もう一度詰め物を作り直しているのです。

保険で治療するとさほど負担が無いので

やり直しはそれほど患者さんから文句がでません。

でも、良く考えると、費用も掛かった上

また歯を痛めつけることになるので

更に、トラブルの発生の可能性が高まるのです。

果たしてそれで良いのでしょうか?

(双六を参照してください)

私は、”新築”で無く”リフォーム”が可能な場合はそちらを

提案致します。

【欠けたところだけを修理して極力歯を削らない】

その方が長い目で見て歯の寿命を長くすると思うのです。

ではなぜほとんどの歯科医院でセメントが使われ

接着剤が使われないのか?と言う話ですが

大人の事情があるのです。

いくつか理由があります。

最大の理由は“手間とお金が掛かる”と言うことだと考えます。

接着剤は高価なのに、保険制度ではなんと¥220しか請求できません

接着剤を1回使うと少なくとも材料費だけで¥1,000以上かかります。

接着剤をつかうには、天然の歯や人工の詰め物にも

事前に器械的、化学処理をする必要があります。

これもまた考えようによっては二手間、三手間かかります。

また、逆説的ではありますが、良く接着すると言うことは、

はみ出た接着剤をキレイに取り除くに非常に手間が掛かると言うことです。

それに歯科医が付きっきりで行ったら、もう一人患者さんを診察する時間が

無くなってしまいます。いわゆる回転が悪くなるのです。

もっというと・・・・・きちんと取るにはやはり顕微鏡が

必要なのです。

きちんと取れないということは

言い換えれば”永久に取れない人工歯石を付けてしまう”ことに

他ならないのです。

また、救えない話になってしまいましたが

医療や健康に関する情報は知らないと、

自分や家族に直接関わることなのです。


 

 

 

 

 

 

 

 

蛇足です。かかりつけの先生に接着剤を使ってますか?

とお聞きにならない方がよいかもしれません。

「使ってますよ」というお返事があっても

恐らく”ジン強化型グラスアイオノマー”というものです

本質的にはセメントですので接着剤ではないと考えます。

またまた救えない話になりました。