むし歯は目には見えない

Q「先生、私の口には『むし歯』が何本有りますか?」
 これほど聞かれて困る質問はありません。
なぜならば、私は歯科医師になって以来
虫歯を見つけたことがないからなのです。

歯科医が虫歯を見つけたことが無いなんて
どんな藪医者かと思われるかもしれませんが

実は、そもそも、虫歯は目に見えないものなのです。
そこで、逆に皆さんに質問します。
「高血圧や糖尿病は目に見えますか?」

高血圧は血圧が高くなった状態が続くことですし
糖尿病は血糖値が高いことが続くことをいいますよね
同じように、むし歯とは……..
カルシウムなどのミネラルが歯から溶け続けている状態のことを呼びます。

Q「でも、歯に開いた穴をむし歯って言いますよね?」

そうですね、”あの穴”は『むし歯』では無く『むし歯の結果』なのです。
これは皆さんの質問を煙に巻いているのでは無く
先ほどの糖尿病に例えると血糖値が高くなるのが本質ですがその糖尿病をこじらせると、失明したり指を切断しなければならなかったりします。それと同じようにむし歯をこじらせると最後に穴が開くのです。


もっと詳しく説明すると


透明なガラスのような『つるつる』の状態が健康な歯の状態だとすると、歯からミネラルが流れ出るとだんだん磨りガラスのようになり、さらに進行すると内部がスカスカのスポンジ状になります。最後に落盤事故のように表面のエナメル質が崩れて、結果『穴』となるのです。その課程は通常何年もかかります。

そのため、従来は『むし歯』が進行して『穴』の状態になって発見されるので『むし歯=穴』として認識されているのです。

そうするとむし歯の治療の本質はミネラル流出という原因療法で、決して穴を塞ぐことでは無いことがおわかりだと思います。